トラウマへの働きかけ
- 2015/11/28
- 19:03
最近はトラウマという言葉をよく聞くようになりました。心的外傷と言われるので心の問題として取り上げられますが、その症状は心だけでなく身体にも現れます。
何故だかわからないけれど、こんな症状が続いて困っている。何故だかわからないけど、こんな気持ちが続いて戸惑っている。「あの時のアレが原因だ!」とはっきり言えるようなことは思い当たらないけれど、とにかく今、困っている。
そういうときに、もし原因がわからないと働きかけが出来ないとしたら…。困っている現象ではなく、「なぜこうなってしまったのだろう」「何が原因だろう」という探索から始める必要があります。
でも、何も思いあたらず、原因はサッパリわからない、かもしれません。
それとも原因に気づいたけれど人には言いたくない、かもしれません。
そんなときは、どうしたらいいのでしょうか?
もちろんテーマをお話しいただいて始めることもできますが、原因を探らなくても、原因を言葉にしなくても「今 目の前にある身体」を通して働きかけることは可能です。「過去の原因」を解明することではなく「今 楽になること」から始めます。心と身体はつながっています。心は身体に影響を与え、身体は心に影響を与えます。ですから、原因は分からなくても構いませんし、後に判明するかもしれません。
ほぅ~っとため息がひとつ出るごとに、何かが少しずつ変わっていきます。
すぅ~っと息を吸い込むごとに、何かが少しずつ広がっていきます。
身体はいつも「今 ここ」にあります。
急がず、焦らず、ゆっくりと自分の身体に気づくことから始めます。
ヒーリングはいつも「今 ここ」で起こります。
●アプローチの背景:
画期的なトラウマ療法と言われる、ソマティック エクスペリエンス(SE)では、トラウマは次のように定義されています。「トラウマは神経系の中で起きる反応であり、出来事に由来するものではない」。
一瞬の大きな衝撃によって身体システムに過剰な負荷がかかることもあれば、日々の小さな積み重ねが身体システムの限界を超える場合もあり、これらが複合的に絡み合っている場合もあります。すなわち、外の「出来事」ではなく、身体内の状態によってトラウマ症状が起こると考えられます。
◆自律神経の働き
自律神経系は、体温・循環・呼吸・消化・分泌などの基本的な生命維持機能を調節しています。自律の名が示すように無意識的・反射的に働き、意図的コントロールは受けません(例/眠っていても心臓は動き、消化不良や便秘は「思考」で解消できません)。
自律神経には、交感神経と副交感神経があり、交感神経は活動モード、副交感神経は休息モードに働き、相互に拮抗しながら作用します。
摂食・飲水などの本能行動、恐れ・警戒・怒り・防御・逃走などの情動行動は、自律神経系の反応を伴います。
生命に関わるような脅威的な出来事に対する神経系の正常な反応では、副交感神経にブレーキがかかって交感神経が覚醒し、闘うか逃げるか生き延びるために全身が反応します。そこからさらに交感神経が覚醒するとシャットダウンと呼ばれる凍りつき反応を引き起こします。
これらの反応は爬虫類脳とも呼ばれる古くからある脳幹による働きであり、日常的に生命が危険に晒されていた時代と変わりありません。これらは「危機的状況に対する正常な反応」であり、危険が去った後に、副交感神経が機能を取り戻し、通常の活動モードと休息モードの行き来に戻れば何も問題はありません。
◆自律神経の過剰反応
しかし、危機的状況が過ぎても自律神経系の調整がうまく起こらず、交感神経が覚醒した状態が続いたり、凍りつき反応が続くと、本能行動や情動行動に影響を与え始めます。
交感神経が過剰に働けば、心拍数上昇(ドキドキ)・速くて浅い呼吸(ハアハア)・筋緊張(カチカチ)・不眠(パッチリ)・過度の警戒(ピリピリ)・激しい怒り(ムカムカ)・パニック(アワアワ)などを起こします。
副交感神経が過剰に働けば、極度の疲労(グッタリ)・心拍数低下/低血圧(ドヨーン)・免疫力の低下(ゴホゴホ)・無気力(ダラーン)・無反応(シーン)などを起こします。
これらの極端な反応が一過性ではなく継続すると普段の生活に支障が生まれます。このような状態は、自律神経を整えることで身体的不調を軽減・解消し、同時に心の安定を得ることにつながります。
◆クラニオセイクラルと自律神経
クラニオセイクラルのワークは、自律神経系のバランス調整に適していると言われます。なぜなら…
休息モードを司る副交感神経は、脳幹および仙髄から起こります。クラニオセイクラルの基本的なハンド ポジションである後頭部や仙骨に触れると、脳幹や仙髄は手の中にあります。
クラニオセイクラル バイオダイナミクスのワークでは後頭部や仙骨に触れながら、過剰に活性化した神経系がニュートラルな状態に鎮まっていく手助けをします。
頭蓋や仙骨に物理的なゆがみがあれば、そこから出てくる神経も影響を受けるため、頭蓋や仙骨の位置が整うことも自律神経へのサポートとなります。
◆対話のワーク
対話を通したワークでは、自分にとって安心とはどういうことか、心地よいとはどういうことかを、身体の感覚を通して確かめながら進めていきます。タッチが苦手な方は、対話だけでワークを進めることもできます。
*ソマティック エクスペリエンシング(SE)
SEは、米国のピーター・リヴァイン博士によって開発された、画期的なトラウマ療法です。
参考文献:
トートラ 人体の構造と機能,ISBN4-621-07374-5
人体の正常構造と機能, ISBN978-4-7849-3178-1
ストレスに負けない脳, ISBN4-15-208594-0
心と身体をつなぐ トラウマ・セラピー ISBN978-87672-230-3
何故だかわからないけれど、こんな症状が続いて困っている。何故だかわからないけど、こんな気持ちが続いて戸惑っている。「あの時のアレが原因だ!」とはっきり言えるようなことは思い当たらないけれど、とにかく今、困っている。
そういうときに、もし原因がわからないと働きかけが出来ないとしたら…。困っている現象ではなく、「なぜこうなってしまったのだろう」「何が原因だろう」という探索から始める必要があります。
でも、何も思いあたらず、原因はサッパリわからない、かもしれません。
それとも原因に気づいたけれど人には言いたくない、かもしれません。
そんなときは、どうしたらいいのでしょうか?
もちろんテーマをお話しいただいて始めることもできますが、原因を探らなくても、原因を言葉にしなくても「今 目の前にある身体」を通して働きかけることは可能です。「過去の原因」を解明することではなく「今 楽になること」から始めます。心と身体はつながっています。心は身体に影響を与え、身体は心に影響を与えます。ですから、原因は分からなくても構いませんし、後に判明するかもしれません。
ほぅ~っとため息がひとつ出るごとに、何かが少しずつ変わっていきます。
すぅ~っと息を吸い込むごとに、何かが少しずつ広がっていきます。
身体はいつも「今 ここ」にあります。
急がず、焦らず、ゆっくりと自分の身体に気づくことから始めます。
ヒーリングはいつも「今 ここ」で起こります。
●アプローチの背景:
画期的なトラウマ療法と言われる、ソマティック エクスペリエンス(SE)では、トラウマは次のように定義されています。「トラウマは神経系の中で起きる反応であり、出来事に由来するものではない」。
一瞬の大きな衝撃によって身体システムに過剰な負荷がかかることもあれば、日々の小さな積み重ねが身体システムの限界を超える場合もあり、これらが複合的に絡み合っている場合もあります。すなわち、外の「出来事」ではなく、身体内の状態によってトラウマ症状が起こると考えられます。
◆自律神経の働き
自律神経系は、体温・循環・呼吸・消化・分泌などの基本的な生命維持機能を調節しています。自律の名が示すように無意識的・反射的に働き、意図的コントロールは受けません(例/眠っていても心臓は動き、消化不良や便秘は「思考」で解消できません)。
自律神経には、交感神経と副交感神経があり、交感神経は活動モード、副交感神経は休息モードに働き、相互に拮抗しながら作用します。
摂食・飲水などの本能行動、恐れ・警戒・怒り・防御・逃走などの情動行動は、自律神経系の反応を伴います。
生命に関わるような脅威的な出来事に対する神経系の正常な反応では、副交感神経にブレーキがかかって交感神経が覚醒し、闘うか逃げるか生き延びるために全身が反応します。そこからさらに交感神経が覚醒するとシャットダウンと呼ばれる凍りつき反応を引き起こします。
これらの反応は爬虫類脳とも呼ばれる古くからある脳幹による働きであり、日常的に生命が危険に晒されていた時代と変わりありません。これらは「危機的状況に対する正常な反応」であり、危険が去った後に、副交感神経が機能を取り戻し、通常の活動モードと休息モードの行き来に戻れば何も問題はありません。
◆自律神経の過剰反応
しかし、危機的状況が過ぎても自律神経系の調整がうまく起こらず、交感神経が覚醒した状態が続いたり、凍りつき反応が続くと、本能行動や情動行動に影響を与え始めます。
交感神経が過剰に働けば、心拍数上昇(ドキドキ)・速くて浅い呼吸(ハアハア)・筋緊張(カチカチ)・不眠(パッチリ)・過度の警戒(ピリピリ)・激しい怒り(ムカムカ)・パニック(アワアワ)などを起こします。
副交感神経が過剰に働けば、極度の疲労(グッタリ)・心拍数低下/低血圧(ドヨーン)・免疫力の低下(ゴホゴホ)・無気力(ダラーン)・無反応(シーン)などを起こします。
これらの極端な反応が一過性ではなく継続すると普段の生活に支障が生まれます。このような状態は、自律神経を整えることで身体的不調を軽減・解消し、同時に心の安定を得ることにつながります。
◆クラニオセイクラルと自律神経
クラニオセイクラルのワークは、自律神経系のバランス調整に適していると言われます。なぜなら…
休息モードを司る副交感神経は、脳幹および仙髄から起こります。クラニオセイクラルの基本的なハンド ポジションである後頭部や仙骨に触れると、脳幹や仙髄は手の中にあります。
クラニオセイクラル バイオダイナミクスのワークでは後頭部や仙骨に触れながら、過剰に活性化した神経系がニュートラルな状態に鎮まっていく手助けをします。
頭蓋や仙骨に物理的なゆがみがあれば、そこから出てくる神経も影響を受けるため、頭蓋や仙骨の位置が整うことも自律神経へのサポートとなります。
◆対話のワーク
対話を通したワークでは、自分にとって安心とはどういうことか、心地よいとはどういうことかを、身体の感覚を通して確かめながら進めていきます。タッチが苦手な方は、対話だけでワークを進めることもできます。
*ソマティック エクスペリエンシング(SE)
SEは、米国のピーター・リヴァイン博士によって開発された、画期的なトラウマ療法です。
参考文献:
トートラ 人体の構造と機能,ISBN4-621-07374-5
人体の正常構造と機能, ISBN978-4-7849-3178-1
ストレスに負けない脳, ISBN4-15-208594-0
心と身体をつなぐ トラウマ・セラピー ISBN978-87672-230-3
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