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バイオメカニックの中のバイオダイナミクス

初めて学んだクラニオは、バイオメカニックのアプローチでした。

3ヶ月かけて基礎トレーニング、数年経験を積んだ後に1ヶ月かけてアドバンスのトレーニング。さらに経験を積んだ後に出産のプロセスとその影響に付いて。これらを通して、10ステップ プロトコル*と呼ばれる手順、身体内に残るエネルギーの塊(エナジー シスト)の見つけ方、体制感情解放、イメージと対話の使い方、マルチプルハンズと呼ばれる複数のプラクティショナーによるセッションなどを学びました。

基礎トレーニング修了直後の経験の浅い時期は、手順が決まっている10ステップ プロトコルをとてもありがたく思いました。階段から落ちて腰を打った人の痛みが1回のセッションで消えたり、慢性の頭痛が軽減したり…。決められたところに、決められた順番に手を置いていくだけでそれなりの結果が出るのは素晴らしいことでした。

しかし、経験を積んでいく中でも毎回悩んでいたのは、10ステップをこなすための時間が短いということ。足、仙骨(骨盤隔膜)、横隔膜…と下肢から始まり、頭蓋へと進むステップで、頭蓋の辺りになると時間との勝負!みたいな感じになってしまう。慣れたら手際が良くなるかと思っていても、なかなか状況は変わらない。

ある時、仙骨に触れながら「今日は10ステップ全部やるのは諦めた」と開き直りました。その代わり、ひとつひとつ、行けるところまで丁寧に時間をかけていこう、という方針に変更。そして今までにないくらい時間をかけて仙骨に触れていると…。

あれ?習ったことのない、聞いたこともない、今まで経験したことのない仙骨の動きを感じる…。仙骨がじわ~っと暖かくなり、膨らんで横方向に広がっていく。骨なのに骨のような感じがしない。もっと柔らかい、何か別物のような。何だろうこれは。不思議に思いながらも、十分に仙骨が融けた感じがしてから次のポジションへ。

すると、それ以後のポジションの解放が早く、結果的に余裕を持って10ステップの手順を終えることができました。仙骨にあんなに時間をかけたから、頭蓋は後頭骨辺りまでか…と思っていたのですが。

その時の仙骨の感触は印象的でした。それ以降、毎回起こるわけではありませんが、それが起こるとより良い結果が得られることがわかってきました。しかし、いつ、どのようなタイミングで、何故仙骨が暖かく融けて横に広がる感じがやってくるのか分かりませんでした。バイオメカニックのトレーニングのアシストを続けていても、その中では教えられないことだったので 「これは私の発見!」 と信じていました。

 

…その数年後にバイオダイナミクスのトレーニングを受講してみたら、すでに理由は解明され、体系付けられ、整理整頓されていました…。

 

バイオダイナミクスのアプローチでは、ものごとがとてもゆっくりと進みます。スローダウンしてゆっくりと進めば、バイオメカニックのアプローチでも同じような体験ができるということ、バイオメカニックとバイオダイナミクスの間に明瞭な境界線はなく、環境が整ったときには同じことが起こるということを実体験したのだと理解できました。

バイオダイナミクスのアプローチでの身体システムは、バイオメカニックで扱うときよりも、より繊細で微細な状態なので、本当に丁寧に観察することが求められます。バイオメカニックでは見せることのない身体システムの様子がプラクティショナーの手の中に感じられたとき、新しいドアが開いていることを実感するのでしょう。



参考文献:
*「もうひとりのあなた」J.E.アプレジャー/科学新聞社
「クラニオセイクラルバイオダイナミクス vol.1」フランクリンシルズ/産学社 エンタプライズ
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プロフィール

木村まや

Author:木村まや
1994年にクラニオセイクラル ワークに出会い、それからずっとこのワークの探求を続けています。

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